研究概要 |
急激な圧力変動を伴う圧縮波、衝撃波や膨張波は総称して圧力波と呼ばれ、これらの圧力波が長い管路(パイプラインやトンネル)を伝播する際の急激な圧力変動を制御するには、伝播過程における圧力波の強さの減衰や波面の時間的変形、すなわち波動伝播の非線形現象、距離減衰変形を正確に知ることが必要である。平成22年度は、波動シミュレーター内を伝播する圧力波の距離減衰変形の遷移現象を測定すると共に、本研究室で開発した大気密度の1/1000までも測定できる高い感度を持ち、高速測定が可能なレーザー差動干渉計を用いて管内を伝播する圧力波背後に発達する非定常流れの助走部境界層及び発達部における層流から乱流への遷移現象を測定し、圧力波の距離減衰変形の遷移現象に対する非定常境界層のデータを得た。その結果を下記に要約する。 (1)管内流れにおいて,レーザー差動干渉計にて管内の密度変動の測定を行うことができた. (2)管内流れの乱れを測定により,遷移時間を実験的に見積もることができた. (3)遷移レイノルズ数は圧縮波の伝播距離によらず一定の値を示し,境界層理論の遷移開始点と一致する. (4)数値計算で圧縮波の伝播特性を求めることができた.圧縮波の非線形性と散逸性を音響レイノルズ数で表すことができた. (5)数値計算での伝播に伴う圧縮波の圧力の減衰係数が,初期圧縮波の圧力が高いほど大きくなるという傾向が過去の実験結果と一致した. (6)管内を伝播する圧縮波の拡散率は,波形の形や大きさによって変わることが数値計算からわかった.圧力が大きいほど拡散率は小さくなる傾向がある. (7)遷移モデルを使用した数値計算により,圧縮波後流に発達する非定常境界層の分布がオーバーシュートの形成に影響を与えていることがわかった。
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