研究概要 |
大径の前段風車ロータと小径の後段風車ロータが,固定子を持たない発電機の内外二重回転電機子を互いに駆動する,新たな風力発電ユニットモデルを用いたフィールド試験を継続している. 二重回転電機子方式二重巻線形誘導発電機の制御に着眼して得られた主な成果は次の通りである。(1)ランプ負荷が小さいほど,起動トルクが小さくて済むからカットイン風速は遅くなり,風速に対して相対回転速度が速くなる分,誘起電圧も高くなる.(2)しかし,負荷が小さいことは誘起電流が少ないことであり,出力は低くなる.(3)一方,負荷を同じに保って,励磁電圧を高くすると誘起電圧も高くなるが,回転電機子間の磁力が強くなる分,相対回転速度は遅くなるので誘起周波数は低くなるが,誘起電圧と誘起電流の増加により高出力となる.(4)ランプ負荷と系統への誘起周波数を一定に保ち,低回転速度から同期回転速度まで最高出力運転をして,定格の誘電圧を達成するための,前後段風車ロータの回転速度,励磁電圧,励磁周波数を提示した.すなわち,励磁周波数を相対回転速度に反比例させ,励磁電圧は相対回転速度すなわち風速とともに増加させた後,ある程度相対回転速度が速くなった時点から低下させる. さらに,実用化に向けた課題解決にも着手した.(5)アップウィンド型風車ロータの向きについては,後段風車ロータ径に対して0.18後方,軸心から上方0.15のナセル位置で,30秒平均の風向で制御をすればよい.また,騒音低減については,(6)後段風車ロータが小径のため前段風車ロータ翼端渦の影響はなく,ブレード面上の境界層に基づく速度せん断層同士の干渉を抑制すればよい.また,(7)フィールド試験サイトを取り巻く建物と地形モデルについて,風況シミュレーションを行っている.
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