本研究では、レイノルズ数が10^5オーダの高密度過冷却液体酸素の管内流を主対象にして、配管中に設けた絞り部で生じる静圧降下によりキャビテーションを発生させ、その発生状態を観測するとともに、供試流体を配管系に供給するための加圧ガスの種類と暴露時間を変えることで、高密度低温流体中に混入する異種気泡核量をパラメータとしたキャビテーション流動試験を行い、その影響の定量的な解明を目的とする。 本年度は、試験部上流に熱交換器を設け、77Kの液体窒素で所定の温度に冷却した過冷却液体酸素をオリフィス絞り部に供給する配管系を構築し、過冷却液体酸素キャビテーション流動に及ぼすオリフィス径の影響と加圧ガスの影響を実験的に検討した。その結果、オリフィス径の影響はキャビテーション数の増加に伴って解消する傾向を示すが、加圧ガスの影響は高キャビテーション領域で明確化することが判明した。さらに、オリフィス径と流速を考慮した熱力学的パラメータとオリフィス流出係数との関係は、加圧ガスの種類を主パラメータとした場合とオリフィス径を主パラメータとした場合で反対の傾向を示すことが分かった。また、過冷却状態の特異な現象として、Bパラメータがゼロ以下に低下すると下流圧力の変動幅が急激に増加する不安定性の存在が確認された。 さらに、高密度過冷却液体酸素の可視化流動試験を行い混入気泡核がキャビテーションの発生・進展状況に及ぼすメカニズムを究明するために、本年度は真空断熱した可視化オリフィス試験部の整備を進め、液体酸素を用いた可視化流動試験を安全に実施できることを確認した。
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