本研究では、レイノルズ数が10^5オーダの高密度過冷却液体酸素の管内流を主対象にして、配管中に設けた絞り部で生じる静圧降下によりキャビテーションを発生させ、その発生状態を観測するとともに、供試流体を配管系に供給するための加圧ガスの種類と暴露時間を変えることで、高密度低温流体中に混入する異種気泡核をパラメータとしたキャビテーション流動試験を行い、キャビテーションの熱力学的効果に及ぼす影響を定量的に把握する。 今年度は、所定の温度に冷却した過冷却液体酸素をオリフィス絞り部に供給するキャビテーション試験装置を用いて、主に可視化流動試験を行い、オリフィス流動試験結果と比較するとともに、熱力学的効果の定量化を図るため測定結果に基づく解析結果と比較、検討した。その結果以下のことが明らかとなった。(1)高速度撮影画像より、Bファクタとグレースケールで表すキャビテーション存在割合との定量的な相間性が確認された。(2)Bファクタから求めたオリフィス下流ボイド率α_2と、気液二相流の音速計算から求めたオリフィス出口ボイド率α_0との比α_2/α_0を、Σ*に基づいて整理することで、過冷却状態の低Σ*領域では気泡の成長比率が急激になることが定量的に確認された。また、この領域では加圧ガスの影響が明確化し、ヘリウムガス混入によりキャビテーションの成長抑制効果が高くなることが分かった。(3)過冷却状態において、キャビテーション数σ_<p1>>1.05、B<0となると下流圧力の変動が大きくなる不安定流動が発生し、その発生温度は加圧ガスの種類によって異なることが分かった。さらに、発生温度に及ぼす加圧ガスの影響は、(2)の結果から合理的に説明できることが判明した。本研究により、高密度過冷却液体酸素のキャビテーション不安定流動に対する緩和策の定量化に資するデータを蓄積することができた。
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