水中に超音波を放射すると、音の圧力により水の屈折率が変化し、光路長が変わる。これを実時間ホログラフィ干渉法により観測すると、音の圧力変化による干渉縞画像が得られる。この画像から音圧分布を定量的に測定することができる。我々は、この手法を開発し、水中超音波の音圧分布測定の基本的手法をほぼ確立している。音圧分布が測定できると、粒子速度が計算でき、音圧値と組み合わせて、サウンドインテンシティを求めることができる。サウンドインテンシティの測定は、波長の長い可聴音の領域では、マイクロフォンを組み合わせて実現されており、有用な測定法になっているが、波長の短い超音波領域では困難で実現されていない。この研究の目的は、超音波音圧分布を光学的に測定し、超音波領域での2次元・3次元超音波音場のサウンドインテンシティ分布測定を実現することである。 (1)音圧分布からサウンドインテンシティを求める手法の検討 この計算は音圧分布から空間差分および時間積分することで得られる。そこで、矩形開口通過音場について、瞬時値の音圧分布測定を超音波の位相をずらせて行い、位相シフト法を用いて計算し、音圧の振幅と位相を抽出した。このことは、超音波サウンドインテンシティ測定に直結するだけでなく、超音波振動子の性能評価法のひとつにもなりうると考えている。 (2)観測光学系の改良 レーザパルスゲートシステムを用いて、実時間ホログラフィ干渉光学系を改良した。これにより光パルスと現象の同期をとって、最短10nsecの光パルスを発生させ、超音波の任意の位相において、音圧分布の瞬時値を測定することができる。この干渉計は、光誘起屈折性結晶である珪酸ビスマス(BSO)結晶を記録媒体に用いており、光誘起屈折性結晶の高速度ホログラフィ干渉法への新たな応用と言える。
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