超音波を水中に放射したとき、その音圧により、放射音場の水の屈折率が変化する。その放射音場に垂直にレーザ光波を入射させると、光波の光路長が変化し、これを珪酸ビスマス(BSO)を用いた実時間ホログラフィ干渉法で観測する。超音波は高い周波数で変動するため、生じるホログラフィ干渉縞も高速に変化する。これを観測するのに、CWのコヒーレントなレーザ光を光変調器で、50nsecのパルス光にして、瞬時に再生しCCDカメラで記録する。この干渉縞画像よりフーリエ変換縞解析法を用いて、水を感圧センサとして得た音圧分布情報を抽出し、音圧の瞬時値分布を得る。さらに超音波の位相の異なる音圧瞬時値分布より、超音波の音圧振幅・位相分布を求める。音圧振幅・位相分布が測定できると、可聴音の領域で用いられているサウンドインテンシティ法の手法が適用できる。音圧より粒子速度が計算でき、超音波のサウンドインテンシティ分布を求めることができる。 (1)光誘起屈折性結晶BSOを用いた高速度ホログラフィ干渉法の技術を開発した。 (2)実時間ホログラフィ干渉法を用いて水中超音波の音圧瞬時値分布の測定が実現できた。超音波パルスの音圧分布とその伝搬も捉えることが可能になった。 (3)超音波の位相の異なる音圧瞬時値分布を求め、位相シフト法を用いて音圧振幅分布と初期位相分布測定を可能にした。位相シフト法は、干渉縞解析で干渉縞の位相を抽出する手法であるが、ここでは、新たな応用として超音波の音圧の振幅と位相の算出に用いた。 (4)超音波領域においてサウンドインテンシティ法を適用し超音波の放射強度分布測定を実現した。 3次元分布測定については、誤差の蓄積、実用性の点で、研究の余地が残るが、従来、超音波の放射特性を測定する方法はかなり限定されており、ここでの方法は新たに超音波の音圧瞬時値、圧振幅分布、放射強度分布といった放射分布の測定法となりうることを示せたと考える。
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