研究課題/領域番号 |
21560195
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研究機関 | 防衛大学校 |
研究代表者 |
多田 茂 防衛大学校, 応用科学群, 教授 (70251650)
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研究分担者 |
工藤 奨 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70306926)
一宮 浩一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30037923)
鳥山 孝司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50313789)
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キーワード | 動脈硬化症 / 低比重リポ蛋白 / 血管平滑筋細胞 / せん断応力 / 血管壁伸張 |
研究概要 |
せん断応力・壁伸張といった『力学的刺激』と血管細胞・組織における『機能異変』との生理学的関係の解明を行うため、本年度は内皮細胞の機能発現と密接に関係のある、血管壁内部に位置する平滑筋細胞が浸透流によるせん断応力を受ける場合の低比重リボ蛋白(LDL)物質輸送に関する数値シミュレーションを行った。 本研究では、血管平滑筋細胞に作用するせん断応力の大きさ・分布状態が細胞の生理学的機能に及ぼす影響を数値解析的に解明することを目的としている。計算は複雑な幾何形状を持つ血管組織内部のモデリングを行う為、解適合座標系を用いて流れと物質輸送の基礎方程式を離散化し、血管平滑筋細胞周囲のLDLの流れ・反応・濃度場の数値解析を行った。計算対象となる生化学物質であるLDLは動脈硬化のイニシエーションと密接な関係を持つ、平滑筋細胞の内膜遊走・増殖を促進する作用を持つ。このLDLが血管壁内の内弾性板を経て血管内腔から浸透するという状況を想定した。また、平滑筋細胞でのLDL消費が、血管壁内部の浸透流により細胞表面で誘起されるせん断応力の「勾配」の大きさに依存する、という仮説を立て、この仮説を元にモデルを構築してシミュレーションを行った。 その結果、平滑筋細胞表面でのLDLの輸送機構の詳細が明らかになった。特にLDLが平滑筋細胞表面で受容体を介して細胞内部に取りこまれる過程においては、内弾性板の「障害物」の存在等が重要となること、平滑筋細胞でのLDL消費率はせん断応力の勾配の大きさに強く依存すること、などが明らかになった。その一方で、本研究の最終目的である細胞内シグナル伝達とせん断応力との関係を明らかにする上で必要な、より詳細な現象論的モデルの構築も必要であることが判明した。新たな課題として、このモデルの構築に向けた詳細な数値解析と実験の遂行が浮かび上がった。
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