研究概要 |
ディーゼルエンジンに見られる間欠噴霧燃焼では,噴霧中心部に過濃領域が存在するためスートの生成が避けられなかったが,最近着火遅れを適度に増大させて希薄予混合化を促進することによりスートの生成を抑えることが可能になっている.しかし,能動的な着火制御が困難であることが課題になっている.それに対して申請者らは,低級アルコール類を高着火性燃料の急速予混合圧縮着火燃焼場に導入することにより低温酸化(冷炎)反応が抑制され,ひいては主燃焼発現時期の制御および衝撃的燃焼の緩和が可能であることを実験的に明らかにしている.そこで本研究では,最近バイオ燃料して注目されているエタノールをディーゼルエンジンの吸気から導入することで,筒内に直接噴射する軽油の着火遅れを確保して予混合化を図った際の排気特性および機関性能について検討を行った.その結果,以下の諸点が明らかになった.すなわち,エタノール吸気ポート噴射によって黒煙の大幅な低減が可能であり,その効果にはエタノールの着火抑制効果および軽油噴射量の減少による噴射期間短縮による予混合化期間の増加が大きく寄与している.全投入熱量の20%程度のエタノールを吸気ポートから噴射して導入することにより,比較的低EGR率(吸気酸素濃度15%)で無煙・低NOx燃焼を広いIMEP範囲で実現可能である.圧縮比は失火およびノッキングを生じない範囲で低いほうがエタノール吸入による予混合化に有利である.エタノール吸入とEGRにより高負荷を除いて噴射圧力が60MPa程度でも無煙・低NOx燃焼を実現できる.エタノール吸入によりアセトアルデヒドが高濃度で排出されるが,ごく低負荷を除いて酸化触媒による浄化が可能である.
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