研究概要 |
GaAs単結晶成長における熱・物質移動現象の解明を目的として,融液の複雑な流動現象を明らかにするために,前年度に引き続き可視化実験装置を用いて成長装置を模擬したるつぼ内の融液の流動観察を行なうとともに,流動観察の結果と数値計算の比較を行い,計算モデルのさらなる検証を進めた.一方,種々の結晶径,結晶長における成長装置内の熱流動数値計算を行ったほか,結晶欠陥である多結晶化の発生要因を追求するために,融液へのシード(種結晶)付け時の詳細な熱流動数値計算を行った. 可視化実験は,るつぼを模擬したビーカー内にGaAsを模擬した水と封止材である酸化ホウ素を模擬した機械油を用いて行なった.トレーサー粒子にはGlass Hollow Spheresを用いた.実験装置は成長装置と同様に加熱ができ,模擬結晶とビーカーも回転する構造となっている.今年度はるつぼの回転数や結晶の回転数の違い,融液の量の変化に加えて,回転方向を変えたものや擬似結晶近傍の流動に着目して詳細な可視化実験を行った.それぞれの可視化結果は遠心力と対流が共存し互いに影響しあうものとなったほか,結晶に引きずられる流動も確認できた.数値計算によってもその特性を定性的に表現することができ,計算モデルのさらなる精度向上に結びつけることができた.一方,成長装置内の熱流動解析では,大型炉における歩留まりの違いを明らかにするために,種々の結晶径,結晶長,シード付け時に関する解析を試みた.その結果,結晶径を問わず結晶長が長くなると結晶近傍の温度が上昇することが明らかになったほか,雰囲気中の窒素ガスの流動が結晶径の異なる成長において大きく変化することが明らかになった.このガス流動の違いが結晶の温度分布に与える影響が大きいこともわかった.また,シード付け時には結晶のサイズにより周囲のガス流速が大きく異なることが明らかになったほか,そのガス流動が影響し,シードにおける温度勾配が大きく異なることが確認できた. 以上,本年度の研究により融液の流動特性について詳細を明らかにできたほか,計算モデルの精度向上を図ることができた.また,異なった結晶径,結晶長に加えてシード付け時の装置内の熱・流動特性も明らかにすることができた.
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