研究概要 |
平成22年度に構築した2次元レーザ誘起赤熱法(LII)を用いて,種々の火炎および条件下における計測を行い,すす生成過程に及ぼすマイクロ波照射の影響を明らかにした. シングルモードマイクロ波発生装置内に種々の形態を有する火炎,すなわち平面拡散火炎,噴流拡散火炎および過濃予混合火炎を形成させ,火炎内のすす体積濃度分布の計測を行った.2次元LIIでは,532nmND3+:YAGレーザをシリンドリカルレンズによりシート状にして計測対象に入射させた.レーザシートは高さ20nm幅0.5nmで強度は0.5J/cm2とし,中心部分の10nmのみを観察に用いた.LII信号は532nmバンドストップフィルタと410nm(FWHM10nm)の干渉フィルタを通してICCDカメラにて検出した.ICCDカメラのゲートタイミングはレーザ発振後20ns後,ゲート時間は50nsとした.その結果,シングルモードによるマイクロ波照射によるすす濃度分布の変化を明確に確認することはできなかった. また,同様の手法を用いて,マルチモードマイクロ波発生装置内における火炎中のすす体積濃度分布計測を行うとともに,すすの一次粒径計測を行った.異なる2つの経過時間におけるLII信号強度を計測し,その強度の減衰過程からすすの粒径を求めることを試みた.この際,効率良くマイクロ波を火炎に照射させることを目的として,マイクロ波発生装置内に表面にマイクロ波吸収体を塗布した断熱材(サセプター)を挿入して実験を実施した.その結果,マイクロ波照射により火炎中のすす濃度が約10%から20%低減する傾向が観察された.特に,すす濃度の高い領域ですす濃度の減少が顕著であることが確認された.一方,すすの一次粒子径はマイクロ波照射によりほとんど変化しなかった.これらの結果から,すす濃度の減少は,粒径の減少が要因ではなく,すす粒子の数密度が減少したことによるものと推測された.
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