プラスチック材同士の接合は、自動車・医療機器の産業並び、マイクロデバイスの精密加工において重要な技術として注目を浴びている。特にポーラス樹脂材(主として樹脂繊維の不織布)はフィルタ類に用いられ用途は多岐に渡り、接合の場面も多い。ただし、高精度の接合技術は現在のところ確立されていない。 今年度はツリウム:ファイバーレーザを用いてのポーラス材の重合わせ溶着を伝熱工学的に検討した。その理由は、一般の樹脂素材は近赤外線のほうが透過性が高く、ポーラス素材の深部まで光が到達し安く、結果的に溶着可能な部材厚みが増すからである。対象の部材はポリプロピレン製不織布で、織上げ目付の異なる6種類のシート(三井化学:シンテックスPS-103、105、108、110、114、120)である。溶着性能評価において、レーザ照射条件は照射出力を一定とし、速度を変化させ、溶着可能な上限速度を見出すべく実験を行い、この上限で製作した溶着部材をピーリング試験により破壊強度を測定した。試験片形状は20x50mmで、方端で10mmの長さで溶接した。ピーリング試験(引張速度10mm/min)の結果は、それぞれ、20-30mm/sの速度で溶着が可能で、ピール破壊強度も素の材料の引張強度の約1/2の値を示す結果となった。 この基本情報を元に、応用面からの検討を加え、円柱状の「ローラ式ヒートシンク」をワーク上で回転させ、接触部が常に変更される機構を持った溶着システムを開発し、部材長さの制約のない、連続直線溶着が実現された。
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