中央に貫通孔を有し触媒を担持させたセラミック系多孔質体に液体メタノールを含浸させ、孔内壁をこれに接触させたコイルヒータにより加熱することで、多孔質体内に形成する気相部と液相部それぞれに誘起される熱流とこれに対向する気液流を利用して熱源からの熱のみにより液体燃料から水素を生成する方法について、その有効性や効率の増大化等を図るための指針を得ることを目的として研究を行った。 昨年度(本研究課題初年度)の結果、本方法の水素生成に関する有効性は示されたものの、(a)未反応蒸気の生成に消費される熱量が大きい、(b)多孔質体への原料液供給形態により反応に必要な乾燥領域の大きさが影響される、(c)加熱密度の影響が明瞭でない、(d)反応場の温度の制御が重要であることなどが明らかとなった。 そこで今年度は、反応収率向上の観点から(a)~(d)の項目の検討をさらに進め、その結果、 1.多孔質体の小型化による加熱密度の増加は、ガス生成速度の顕著な増大に効果的であること 2.乾燥部内の温度分布が急峻になり温度が過剰に上昇する傾向があることから、触媒層内の温度が全域にわたり反応に適した温度(200~300℃)に制御できる加熱方法を考案する必要があること 3.反応収率の点で適切となる触媒層厚さを要素実験により確認する必要があること 4.多孔質体への液供給を制限すると乾燥域が広がり温度分布も緩やかになる一方で安定性が損なわれること 5.温度場に伴う熱応力により割れを生じることのない多孔質体構造を考案する必要があることなどが明らかとなった。これらの結果を受けて、改善策を既に考案しており、来年度(本研究課題最終年度)にその効果を確認していく予定である。
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