多孔質のもつ多様な機能(毛管給液機能、マイクロチャネル熱伝達機能、及び触媒担持機能)を利用して、一個の熱源からの熱のみにより液体燃料から水素を生成する新たな方法を提案し、同方法の有効性や効率の増大化等を図るための指針を得ることを目的として研究を行った。 具体的には、中央に貫通孔を有し触媒を担持させたセラミック系多孔質体に液体メタノールを含浸させ、孔内壁をこれに接触させたコイルヒータにより加熱することで、多孔質体内に形成する気相部と液相部それぞれに誘起される熱流とこれに対向する気液流を利用して、メタノールの分解反応を進行させ、その際のガス生成速度と成分の分析を行った。 本研究課題のこれまで(平成21及び22年度)の研究から、本方法の水素生成に関する有効性が示されたものの、反応場の温度制御性の向上や反応への供給熱量の利用率の向上が図れ、かつ熱応力による割れを生じることのない反応器(多孔質体)構造とする必要があることなどの課題があることが明らかとなった。 そこで、最終年度(平成23年度)は、多孔質内の液予熱場と反応場を予め分離した構造とすることが有効と考え、メタノール液を含浸させる多孔質体の貫通孔の中に、触媒を担持した多孔質管を、隙間を隔てて設置し、この多孔質管にコイルヒータを挿入し加熱する(二重)構造の装置を作成して実験を行った。その結果、触媒担持層全体を反応に適した温度に安定して保つことができ、かつ反応収率と反応への供給熱量の利用率を飛躍的に向上させることができた。また加熱開始から僅か1分で定常値の反応速度を得ることができる迅速応答性を有していることも明らかとなった。反応収率は多孔質管内の反応を伴う熱・物質移動の解析モデルにより予測した値と一致した。このことから、さらに触媒層厚さ(多孔質管の肉厚)を含め、反応収率と反応への熱利用率をさらに向上させるためのパラメータと指針を得ることができた。
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