自然対流は強制対流とは著しく異なる乱流特性を有しているため、伝熱面上に突起(フィン)を設けても、強制対流のように容易に伝熱促進を図ることができない。そこでまず、自然対流の乱流伝熱を支配する因子を特定するため、直接数値シミュレーションを行った。この境界層の流れ方向に僅かに主流を付加すると、境界層の遷移が遅れ乱流から層流に逆遷移すること、また重力方向(流れ方向とは逆)に主流を付加すると乱れが増幅されることがわかった。すなわち、境界層の外側の領域の特性変化によって境界層全体が支配されることが明らかになった。この研究成果については、学術門誌Int.J.Heat Mass Transferに公表した。したがって、境界層の外層を如何に制御するかが、伝熱促進の鍵となる。そして本研究では、空気のみならず水にも適用可能な普遍的な伝熱促進技術の開発を目指しているため、現有の実験装置を改良して、水の自然対流境界層に対する基本的な実験データ(これまで研究が殆ど行われていない)を取得した。この実験と数値シミュレーションによる解析結果から、特に乱流による熱輸送が空気の場合よりかなり劣化することが明らかになった。この研究成果の一部は、本年5月開催の第47回日本伝熱シンポジウム(北海道)で発表することになっている.また、9月に開催される第14回国際伝熱会議(米国)では、更に進んだ研究内容を公表する予定である(採択済)。これにより、水の乱流境界層に対する伝熱促進については、促進装置を構成する分割平板の形状、寸法および姿勢を空気とは異なるものにする必要が示唆された。現在、種々の伝熱促進装置を水の境界屑に挿入して実験を行い、伝熱促進に関わる熱流体運動の挙動を特定するとともに、その最適な形状、寸法および姿勢を検討している。速度計測については、PIV(粒子可視化流速計)と本研究申請で購入したLDV(レーザドップラー流速計)の結果と比較しつつ、その精度を検証している。
|