研究概要 |
汎用性のある噴霧冷却(スプレー冷却)特性の予測を行うには、そこで見られる物理現象をできる限り詳細に把握することが肝要である。本研究は、液体とその沸騰点よりはるかに高温の固体面とが突然接触(衝突)する際に起こる過渡的かつ局所的な沸騰現象を基礎実験によって明らかにすることを目的としている。本年度は研究代表者が過去の研究で開発した観察手法を発展させ,変形途中の液滴を多方面から同時観察する手法を確立した。その詳細は次のようである。観察実験では2台の高解像度デジタルスチルカメラと3台のストロボライトを用意し、2つの光学系を設置した。一つの光学系では、変形途中の液滴形状をバックライト法と2重露光法を併用して撮影した。液滴が固体面に衝突する前にフラッシュを1度発光させて液滴直径を確認し、衝突後にもうひとつのフラッシュを発光させて変形中の液滴画像を得た。また、フロントライトで液滴を撮影する別の光学系で液滴の3次元形状と液滴内部の沸騰を観察した。2つのカメラの撮影タイミングを同期させることで、液滴形状を多方面から観察することが可能になった。この手法で直径0.6mmの水液滴と滑らかな加熱インコネル板(表面温度170℃~500℃)との衝突現象を研究し、その有効性を確認した。低温域では固液界面に孤立気泡が、高温域では蒸気膜が形成されるが、そのような沸騰現象は理想化した1次元非定常熱伝導理論から予測される固液界面温度と、液体の状態で存在できる加熱限界温度の大小関係で大まかに分類可能であることが明らかになった。
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