研究概要 |
汎用性のある噴霧冷却(スプレー冷却)特性の予測を行うには、そこで見られる物理現象をできる限り詳細に把握することが肝要である。本研究は、液体とその沸騰点よりはるかに高温の固体面とが突然接触(衝突)する際に起こる過渡的かつ局所的な沸騰現象を基礎実験によって明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度の研究で開発した観察手法を使用して,変形途中の液滴の写真観察を実施した。まず直径0.6mmの水液滴と滑らかな加熱インコネル板(表面温度170℃~500℃)との衝突現象を研究した。低温域では固液界面に孤立気泡が、高温域では蒸気膜が形成されるが、そのような沸騰現象は理想化した1次元非定常熱伝導理論から予測される固液界面温度と、液体の状態で存在できる加熱限界温度の大小関係で大まかに分類可能であることが明らかになった。つぎに、直径が2.3mmの水液滴を使用して同様の実験を行った。直径0.6mmおよび2.3mmの変形挙動を詳細に比較した結果、衝突直後に固液界面で蒸気膜が形成される高温域では慣性力と表面張力の比で定義されるウェーバ数が等しければ、変形挙動に力学的な相似性があることが分かった。低温域では、沸騰気泡や粘性摩擦の効果が無視できないためウェーバ数だけで変形挙動を整理できないことが分かった。さらに、連続液滴衝突の力学的挙動の解明にも取り組んだ。衝突現象は単一液滴のそれとは大きく異なることが分かったが、データ数が不十分であるので次年度も研究を継続していく予定である。
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