研究課題/領域番号 |
21560212
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 仁 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (40229050)
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研究分担者 |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
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キーワード | 熱工学 / スプレー冷却 / 沸騰 / 液滴 / 可視化実験 |
研究概要 |
本研究の目的は、液滴がその沸騰温度よりも充分高い加熱固体面に衝突した際の変形挙動と過渡的な沸騰現象を実験によって明らかにすることである。これを達成するために、初年度(H21)に観察手法を確立し、H22年度は液滴と固体との衝突角度が垂直の場合の観察実験を実施した。H23年度は、斜め衝突における固液界面の沸騰現象が変形挙動に及ぼす影響について検討した。直径が約0,6mmの水液滴を滑らかなインコネル合金面に斜め衝突させたところ、一次元熱伝導理論で推定される接触時の固液界面温度が水の加熱限界温度よりもかなり低い場合は沸騰気泡が、高い場合は蒸気膜が形成された。斜め衝突では非沸騰の温度領域でも、液滴の変形は3次元性を示すが、沸騰気泡が存在する温度領域ではそれがより顕著である。沸騰気泡は固液接触直後から発生・成長する一方、液滴は球形から、薄い紡錘形状に変形する。液膜の薄い部分では、蒸気気泡の破裂が発生し、液滴の破壊が促進された。蒸気膜が形成される温度域では、斜め衝突にもかかわらず、液滴の形状は比較的軸対称性を維持した。蒸気膜の存在により、軸対称性を阻害する液滴と壁面との粘性摩擦が小さくなるためと考えられる。この結果は、米国機会学会誌に投稿中である。また、エマルション液滴を用いた斜め衝突実験も実施した。エマルションは水と油滴から構成される非単一組成の液体であり、見かけの表面張力や粘性係数が水よりも小さい。蒸気泡の破裂による液滴の破壊が、水液滴の場合より起こりにくいことが確認されたが、その詳細なメカニズムは次年度も引き続いて研究予定である。さらに、連続液滴衝突の力学的解明にも取り組み、衝突間隔の影響を明らかにした。しかし、データ数が未だ不十分なためこれも次年度の継続課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の保守や小規模な変更(改修)、物理現象の再現性を確認するための追加実験などの理由で研究に必要な時間は当初の計画よりも増えている。しかし、それらは対応が可能な範囲に収まっており、本研究課題はおおむね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を進めていく予定である。実験手法の妥当性や、それによって得られる結果についてとくに問題はないと考えており、研究計画に変更はない。
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