研究概要 |
研究代表者が示すように,予混合火炎が乱流場を球状に伝播するとき,その燃焼速度が伝播中に増大する.その原因は,火炎の大きさが小さいときは,大小様々な乱れ渦に含まれるエネルギースペクトルのうち小さな渦のもののみが火炎に乱れとして作用し,火炎が大きくなるにつれて大きな渦までもが火炎に作用するためであるものと考えられる.このような非定常乱流火炎の伝播機構を考えるには,従来のような乱れ場を代表する単一の乱れ強さ,スケールのみを考慮した検討のみでは不十分であると考え,乱れの空間スケールやエネルギースペクトルが伝播中の球状火炎にどのように作用するかを調べた. 国内随一の高圧定容乱流燃焼装置を用い,まず,3次元PIV流速測定により得られた速度ベクトルより,乱れ成分についての空間相関関数を求めた.そして,乱れの波数エネルギースペクトルを得た.さらに,乱れの空間積分スケール,テイラーのマイクロスケールを算出した. つぎに,燃焼実験を行い,火炎伝播中の火炎半径と乱流燃焼速度を測定し,その時間変化を求めた.火炎には,その半径よりも小さな乱れ渦のみが作用するものとして,乱れの波数エネルギースペクトルのうち,火炎半径に相当する波数以上のエネルギーを有効乱れ強さとして,有効乱れ強さと燃焼速度との関係を調べた. その結果,伝播中の球状火炎の乱流燃焼速度は,本研究で用いた有効乱れ強さと強い相関を有し,有効乱れ強さの考え方が有用であることが明らかとなった.しかしながら,乱れ強さが異なる場合には,同一の有効乱れ強さにおいても乱流燃焼速度と層流燃焼速度の比は同一とならないことも明らかとなった.そこで,有効乱れ強さとテイラーのマイクロスケールに基づくレイノルズ数による検討を行った.これにより,伝播中の球状火炎の乱流燃焼速度は,有効乱れ強さを用いたレイノルズ数に強く結びついていることを見いだした.
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