研究概要 |
赤外レーザ加熱によって非接触で熱物性値を測定する本測定法では,測定対象とする生体組織などはある程度の赤外光の浸透性があり,それを伝熱モデルにも考慮している.生体模擬試料として,寒天,ゼラチンなどを用いるが,これらの熱伝導率,熱拡散率は不明である.本年度は光学物性である吸収係数を赤外分光光度計(FT-IR)にて,熱伝導率,熱拡散率を非定常短細線法にて測定して,今後行う本測定法の精度検証に役立てる.また,固体の熱物性測定のための接触型センサの作製も行っており,将来にはその測定結果とも検証する. (1) 吸収係数の測定:FT-IRでは赤外透過法で測定するので試料の厚さが必要で,吸収係数の予測値から10μm程度の厚さが要求されるため,試料を赤外透過ガラスに挟んで固化させて精密厚さ計測器(購入計器)にて厚さを厳密に測定した.1wt%の寒天を用いて得られた波長10.6μmの場合吸収係数の平均値はβ=11.7×10^4m^<-1>となり,水の値に比べ37パーセント大きい.しかしながら理論解にこれらの値を用いて計算してみると誤差は2%内に収まり,水の値を用いても問題ないことがわかった. (2) 非定常短細線法を用いた熱物性値測定;本費用でソースメータ(精密電源)を購入した.直径50μmの白金線を用いてセンサを作製し,検定を行った後にいくつかの材料の熱伝導率,熱拡散率の測定を行った.細線法は本来は液体の熱物性値測定用であるが,センサを容器に入れ,その容器内で寒天などの試料を固化させることで測定した.測定試料には1wt%の寒天および4wt%のゼラチン,医療用の超音波用媒質であるゲルソニック(日本光電工業(株)製)を用いた.測定結果の平均値は300Kでは,寒天の熱伝導率λ=0.608W/mK,熱拡散率α=0.146mm^2/s,ゼラチンλニ0.610W/mK,α=0.146mm^2/s,ゲルλ=0.542W/mK,α=0.129mm^2/sであった.
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