研究概要 |
本研究は赤外レーザを用いて試料面を加熱し,赤外カメラで同時に加熱面の温度測定を行うことにより,非接触で熱物性値を測定する装置の開発を目指す.模擬生体試料として,あらかじめ短細線法を用いて熱物性値を測定した1%wtの寒天を測定した結果.解析より求めた理論温度上昇とかなりの差異がみられ,その原因について精査しているところである.本年度は,試料表面からの蒸発と内部からの輻射に関して調べた.蒸発については当初,電子水分計を購入して測定する予定であったが,寒天試料内部の温度の測定と表面にフィルムを貼った影響も調べられるように,所有の恒温槽と熱電対を使って装置を自作した.寒天を容器内で固化し上表面を大気に開放した試料で測定した結果,水分蒸発によって寒天表面と内部に温度分布ができることがわかった.一方,表面にフィルムを貼ると内部もほぼ周囲温度と同じで一定に保たれ,蒸発の影響がフィルムによって防げることもわかった.そこで,熱物性値の測定方法を,フィルムを試料表面に貼って加熱するように変更し,それに伴って数値解析も試料表面にフィルム層を加えたモデルを構築し再計算を行った.フィルムには厚さ11μmのポリ塩化ビニリデン(家庭用のラップ)を使用し,また計算に必要なフィルムの吸収係数をFT-IRを用いて測定した結果,加熱源であるCO_2レーザ光の波長域で平均31800m^<-1>を得た.フィルム表面からの反射は無視できることも確認した.フィルムを貼った場合,赤外カメラを用いた表面温度の測定は,試料内部の熱電対から外挿して得た表面温度と比較することにより,カメラの放射率を0.91にすれば精度よく測れることを明らかにした.試料内部からの輻射の影響は,Beerの法則によって減衰することを考慮し,表面から射出される赤外カメラの波長域の放射能を数値解で求めた.その結果から表面温度は理論解の温度上昇より0.5Kほど低くなることがわかった.これらによって,試料表面からの蒸発の影響は測定上無視でき,内部からの輻射による影響も考慮できた
|