研究概要 |
本研究は,800~1000℃において動作する固体酸化物形燃料電池(SOFC)性能に及ぼす燃料極表面に形成される濃度境界層の影響を定量的に明らかにすることを目的とし,SOFCの性能及び寿命向上に資するものである. セル(空気極/電解質/燃料極で構成される単電池)の燃料極面に垂直に燃料ガスを噴射した場合(噴流場)と,燃料極面に並行に燃料ガスを流した場合(並行流場)の両者で,セル性能を交流インピーダンス法により計測した.交流インピーダンス法は,セルの内部抵抗であるオーム過電圧,活性化過電圧及び濃度過電圧を定性的に分離して性能を評価できる方法である. 平成21年度及び22年度に,燃料極を基板とするY_2O_3安定化ZrO_2薄膜電解質型のセル(30mm×25mm×1.2mm^t,空気極面積10×10mm)を,燃料ガス通路(幅5mm×長さ20mm×高さ0.5~1.8mm)を設けた発電用治具にセットして,単一噴流場と並行流場を切り替えてセル性能を計測比較してきた.これらの条件について,本年度は熱流体解析ソフトを用いて,水素及び水蒸気濃度分布を明らかにし,その分布からセル性能を推定した.また,上記条件の内,燃料ガス通路の高さ1.0mmの条件において,多噴流の効果を実験的に検証すると共に,全長を70mm(空気極面積50mm×10mm)にサイズアップしたセルにおける発電実験および数値解析も実施した. その結果,(1)ガス流速分布は燃料極表面の濃度分布に大きな影響を及ぼし,その濃度分布は低周波数成分に起因するセルの過電圧に影響し,その中でも主にセルの起電力に起因することが明らかとなった.(2)サイズアップしたセルに噴流を適用するためには,噴流の数を増やす必要があるが,噴流間の干渉によりセル性能向上に逆効果となる場合があることなどが明らかとなった.
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