研究概要 |
通常の液体と異なり,温度を上昇させると表面張力の値がある温度以上では上昇するという特異なアルコール水溶液(ブタノール水溶液など,ここでは非線形溶液と呼ぶ)を用いて,衝突流に沸騰を併せた流動様式での冷却技術に関する研究である. 今年度は研究計画に従い,石英の透明ガラス管のT字流路(断面は内径2mmの円),および断熱性樹脂でできたT字流路(断面は3mmx3mmの正方形)を作成し,低流量・低熱流束の条件での現象の観察と伝熱測定を実施した. 石英のT字流路による衝突流沸騰では,T字の接合部に沸騰気泡が滞在する傾向にあったが,非線形溶液であるブタノール水溶液を用いると,通常溶液の純水と比べて,液膜が上方の加熱部に伸び,加熱面を濡らしやすい挙動を示すことが観察された.その結果,気泡も小型化し動きやすい状態であった. 樹脂性のT字流路による衝突流沸騰では,加熱面での沸騰気泡がブタノール水溶液の方ではかなり小型化し,加熱面を移動し離脱が進んでいることがわかった.一方純水では,加熱面から離脱しにくく面を覆ってしまう傾向が見られた. 以上の沸騰気泡および液膜の挙動に起因し,石英および樹脂の流路のどちらの場合でも,純水に比べて,ブタノール水溶液の場合の方が,同じ過熱度で熱流束値が1.5~2倍木きく,伝熱を促進できていることがわかった.但し,実験装置の都合上,いわゆるドライアトの状態まで加熱量を大きくすることができず,その途上までの結果ではあるが,伝熱促進効果は明確であった. 衝突流沸騰を伴うミニチャンネルの流動系で,非線形溶液を使用して伝熱促進を実験的に示した例は著者はこれまで聞いたことがなく重要な知見であると言えよう.
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