環境問題の深刻化により、これまで車載用冷媒として使用されてきたHFC134aの使用規制がEU中心に始まり、自然冷媒の活用、GWPの低い新冷媒の開発が推進されている。特に、新たに車載用冷媒として俎上に上がっているHFO1234yfはHFC134aと物性値が類似で、環境負荷が小さいことから次世代用として期待されている。そこで本研究では、従来から確立を目指してきたCO2冷媒評価シミュレーションがHFO1234yfに適用できるか否かを検証し、汎用性の高い性能シミュレーション法の構築を目指した。 本年度はHFC134a用の伝熱相関式を用いてHFO1234yfの蒸発器、凝縮器の伝熱流動モデルを構築し、それらを組み込んだサイクル全体での計算を行い、その有効性を確認した。また放熱性能向上策として、内部に突起を設けた扁平多穴管仕様による新凝縮器モデルについてシミュレーションを用いて性能改善予測および評価を行った。 その結果、凝縮器および蒸発器単体モデルに関して加熱・冷凍能力、圧力損失ともに実機実験値と比較して±10%以内で予測可能となった。サイクルシミュレーションでは、冷凍能力が±5%、、圧縮機動力が±20%、COPが±20%以内に整理できるようになった。 新凝縮器モデルでは、突起の影響で圧力損失は減少し、熱伝達率は増加することが確認された。また、予測精度向上のため、熱交換器内の冷媒の気液二相流および性能向上が期待できるフィンレス熱交換器の検討を加えた。気液二相流実験ではT分岐相分離特性モデルを作成し、これを多連分岐での流量分配結果へ展開して、各種影響を考慮して補正したところ、±25%以内での予測評価を可能となった。空気側の伝熱実験(フィンレス)では、ルーバーフィンによる従来型と同等以上の能力達成の可能性が見込まれる流路パターンが存在することを確認した。
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