研究概要 |
研究では,多数の熱電対を挿入した伝熱面を用いて伝熱面直下の多数の点における温度変化を測定し,それをもとに表面熱流束の分布・変化を推定する.2009年度は,伝熱面と計測系の評価を行い,液の滴下の際の伝熱について調べた. 外周を絶縁した76本のコンスタンタン線を銅ブロックに埋め込み,伝熱面直下で感温接点が生じるように伝熱面を製作した.熱電対の信号は,増幅した後に各信号を10kHzで収録した.先ず伝熱面と計測系の評価をするために,伝熱面をほぼ100℃に保った状態で,伝熱面上方50mmの位置に置いた注射針の先から精製水を1滴滴下した.この条件では,液滴は伝熱面上で広がった後,表面張力によって収縮していびつな液滴に戻る変形をする.熱流束の立ち上がりは2ms程度で生じ,衝突前の液滴の直径(約3.3mm)程度の範囲では,ほとんど時間のずれがない変化が見られた.これによって,衝突前液滴を投影した面内では,半無限固体の接触を仮定した表面温度分布を与えるように感温点の深さを決定できることを明らかにした. 次に,蒸発の影響を調べるために,初期伝熱面温度を100℃~150℃として測定した.衝突の中心から液滴初期半径の約2倍の地点での熱流束を比較して以下を明らかにした. (1)熱伝達に対する流れの影響は少なく,純粋な熱伝導で伝熱が起こっているとして良い. (2)衝突後の極めて高い熱流束は,液滴が伝熱面上で最大径まで広がる5ms程度継続する. (3)伝熱面温度が100℃の場合,液が収縮して感温点上方から液がなくなる(衝突から15ms程度後)と熱流束が急激に減少するのに対し,120~130℃の場合には,その後も比較的高い熱流束が継続する. (4)伝熱面温度が140℃以上では,衝突直後の高い熱流束も観察されない. 以上のように,液滴が衝突する伝熱面における蒸発の影響を定性的に把握することができた.
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