研究概要 |
平成21年度には,液滴を衝突させる系において実験を行い,伝熱表面直下に埋め込んだ76本の熱電対の応答性の確認と感温点深さの決定を行い,その上で,蒸発による伝熱が生じていることを確認した.平成22年度前半には,この実験系の改善を行った.また,年度後半には,この研究で使用している直径15mmの伝熱面上に単一の気泡を急速に成長させて,その底部にミクロ液膜を形成させ,乾燥面が広がる際の熱流束の分布と履歴を測定することを目指した.その過程で,サブクール液を減圧すると,通常,溶存気体が気泡となって現れ,伝熱面以外から発泡が生じる上,その気泡が観察を邪魔する大きな問題点を見いだした.最終的には,沸騰容器内に気相を残しておくことをあきらめ,十分に脱気した液体を加圧しておいて,急減圧させる方法を用い,伝熱面上に単一の気泡を生成することを実現した. また,熱伝導の逆問題を解くプログラムの開発を終えた.これは,各温度測定点での計算温度が時間平均的に測定データに一致するように表面熱流束を定めるものであり,Beckによる方法を拡張して用いている.前述の実験方法の確率と併せて,目的とする測定を可能にしている. 平成23年度に予定している,一部分のみ,より密に熱電対を配置する伝熱面の感温部深さを最適にするためのシミュレーションプログラムを開発した.これは,軸対称円筒座標による計算で,伝熱面近傍で面の広がり方向の要素分割を細分化させ,適度な計算時間で急峻な熱流束変化の影響を見ることができるものである.
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