研究概要 |
最終年度である2011年度には,以下の2点について研究を行った.実験で使用した伝熱面は,直径が15mmで,面の広がり方向の1.5mm×1.3mmの格子点上,深さ0.3-0.4mmの点に熱電対を埋め込んだものであり,(1)においてもこれを想定している. (1)熱伝導逆問題解法の検証 伝熱面表面から有限な距離離れた複数点の温度から表面熱流束の推定を行う際の限界について,数値計算による検討を行った.この解析では,最初に,同心円環状の熱伝達部分(一様熱流束が奪われる)が一定速度で,中心から外周に向かって移動する状況を仮定して,測定点位置における温度を,軸対称の非定常問題として計算した.この温度を用いて,直交座標による逆問題解法によって,表面熱流束を推定し,最初に仮定した熱流束との違いについて検討した.ここで,求める表面熱流束は,熱電対設置位置を中心とした長方形部分で一様で時間変化すると仮定している.その結果,求まった熱伝達領域の幅が,熱電対間隔以上,かつセンサ深さの2倍以上であれば計算される熱流束と熱伝達領域の幅の両方が有意であるが,この条件が満たされない場合は熱流束と熱伝達領域の幅の積のみが有意であることを明らかにした. (2)ぬれ乾き境界付近の熱流束の推定と伝熱機構の検討 系圧力を急減することによって,過熱状態を引き起こして単一気泡を発生させ,その底部に形成される液膜内の乾燥部が拡大する状況下で,七十数点の熱電対の信号を高速で測定し,それと同時に高速カメラで液膜の状況を撮影した.熱伝導逆問題で推定された表面熱流束から,ぬれと乾きの境界線長さあたりの伝熱量を推定し,これが1kW/mのオーダーであり,半径の増加に従って増加することを明らかにした.またこの伝熱量に従来観察されている限界熱流束近傍のぬれ乾き境界線長さを掛けると,おおむね限界熱流束の値になり,限界熱流束近傍でぬれ乾き境界線近傍の伝熱が重要であることを示した.
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