研究概要 |
21年度の四重安定性に関する実験を一般化して,より一般の多重安足性を有する力学モデルをシミュレータ上に実装した.その運動をコンピュータ・スクリーン上に表示し,これを目視する被験者が,マウスの操作を介して,シミュレーション・モデルに制御入力を加えられる実験システムを開発した.被験者にシミュレーション・モデルの平衡点を切り替えるタスクを与え,被験者が創発した制御入力およびモデルの状態量を時系列として記録した.複数の被験者に共通のタスクを課す実験を実施したところ,被験者が創発する制御入力は多種多様で,有意な個人差が見出された. そこで,制御入力と状態量の時間変化の特徴を,平均値や分散などの振動論的な指標で定量化したところ,単一の操作入力を繰り返し用いるタイプの被験者,複数の類似する操作入力を併用するタイプの被験者,複数の相異なる操作入力を併用するタイプの被験者の3グループに,被験者の母集団が区別できることを明らかにした. 以上の提案指標を応用して,被験者の個性を点数化・符号化する技術を発明し「脳科学検査システム」と称して特許出願した. さらに,発明した脳科学検査システムによって符号化された被験者の特徴を,就職試験等で用いられるSPI検査と関連付ける研究に着手した.特に,操作入力の分散が,SPI検査と高い相関を示すデータが得られた.この予備実験の結果を踏まえて,より多数の被験者についてデータを収集する研究を開始した.
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