研究概要 |
多重安定性を有する力学モデルの運動をコンピュータ・スクリーン上に表示し,これを目視する2名の被験者が,個別にマウスを操作して,シミュレーション・モデルに独立な操作入力を与えられる測定システムを開発し,測定実験を行った.2名の被験者にシミュレーション・モデルの平衡を保つ協調的タスクを与え,被験者が創発した制御入力およびモデルの状態量を時系列として記録したところ,被験者らが創発する制御入力は多種多様で,有意な個体差を見出した. この個体差を客観的に評価するための1つの方法として,被験者の感性を表す15種類の形容語対を用いて,セマンティックディファレンシャル法による感性評価実験を実施した.形容語対は,Osgoodによる形容語対(全76項目)と独自の形容語対(14項目)から,予備実験で操作を体験した被験者へのインタビューに基づいて選定した.得られた心理学的測定量と,前年度実施の振動論的測定量(被験者が創発した制御入力と対応するシミュレーション・モデルの運動の平均値や分散,ピークトゥピークなど)の相関分析を実施した.その結果, ●自分のバランス誤差のRMSと操作の秩序性,自分の操作の難しさ ●相手のバランス誤差のRMSと操作の秩序性,相手の操作の活動性,難しさ,相手への信頼度 ●自分の反応遅れ時間と自分の操作の活動性 など,ヒトの操作と感性の関係を明らかにできた. その他,シミュレーテッドアニーリング法により,被験者単独の操作入力に極めて類似した制御器の同定に成功した.さらに,同様なバランスタスクの振動論的な評価関数と,SPI適性検査の得点を相関分析したところ,いくつかの検査項目について極めて高い相関を得た.
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