研究概要 |
ガンなどの生体内病巣を同定する検査手法の一つに,MRE(Magnetic resonance elastography)法がある.MRE法を高精度化するための課題の一つに,生体内に波動を発生させる装置の開発がある.この装置は,MRI装置近傍の強磁場(3T程度)環境下で使用できるとともに,粘弾性を伴う生体に対して,振幅と位相が既知となる高精度の波動を生成する必要がある.本研究では,生体波動遠隔発生装置を,薄肉弾性体の曲げ変形により振動変位を伝達する構成により構築することを目的とする.まず,装置の試作と計測実験を行うとともに,簡易モデルに基づく理論解析により,生体波動生成の条件を明らかにし,続いて,薄肉弾性体や支持部が有する非線形性の影響や,粘弾性生体内の波動を考慮した理論・数値解析と実験を行い,最適な加振条件をより精密に求めることを目的とする. そのためにまず,薄肉弾性体を用いた遠隔加振装置の試作を行った.具体的には,張力を与えた複数の弦により細長い薄板を懸架し,板の一端に接続した加振器により,板に振動を誘起した.加振器から十分に離れた位置での板の振動を含め,多点における薄板のたわみ変位について同時計測を行い,加振の効果を検証した.とくに,弦の張力により,はりに座屈後変形を与えることで,加振変位を約6倍に増幅し,ほぼ正弦波状の波形で伝達することができた.また,特定の振動数領域では,高調波成分,亜分数次調波成分の影響が大きい非周期応答として振動が伝達するため,遠隔加振装置としての使用にあたり注意を要することを明らかにした.さらに,粘弾性体の挙動を含む,MRE法による診断システムの数理模型の構築を行った.
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