研究概要 |
摩擦面面同士の接触位置が時々刻々変化するだけでなく面の摩耗が進行していくことから,大域的なすべり速度が一定であっても摩擦力特性は変動し生じる振動も変動することになる.このような不規則性を有する振動の特性を明らかにするべく,本年度は一定速度で回転する円盤(ディスク)に弾性支持された円筒(ピン)を押し付ける構造である実験装置の設計・製作を行い,装置の基本的な特性を測定するとともに,摩擦力を導出する力学モデルと解析プログラムを作成した.また,打撃試験により,製作した実験装置は一次の固有振動数が20Hzで2次以上の固有振動数は極めて高く,一自由度系と考えうるものであることを確認した.また系の剛性および減衰についても実験の範囲では振幅に対して線形な特性を有しており,減衰については粘性減衰と考えうるものであることを確認した. ディスクのすべり速度,ピンの押し付け荷重をパラメータとして実験を行った結果,本実験系においては平均的摩擦力はピンの押し付け荷重にほぼ比例するというクーロンの法則に沿うこと,また摩耗量は押し付け荷重にほぼ比例するというホルムの式に沿うことが確認できた.また比摩耗量はすべり速度が速くなるほど小さくなりほぼ一定値に近づくという結果が得られたが,これはすべり速度が速くなると摩耗粉の排出が追いつかなくなるためと考えられる.一方発生する振動は,その振動数は系の固有振動数成分が支配的であるが,その振幅変動の周期についてはディスク1回転に対応する成分のみならず,それよりかなり長い周期の変動成分も存在した,後者の原因として,摩耗粉の排出周期が考えられるが,ビデオカメラによる観察によりディスクの回転周期に比べかなり長い周期で摩耗粉が排出されることを確認した.
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