本研究では、先端に質量を持つ片持ちはり状の振動子の集まり(振動子群)を制振対称の構造物(主系)に設置し、振動子相互の衝突によって系全体の振動エネルギーを吸収する仕組みのダンパを開発することを目的にしている。振動子の基本的な挙動を調べるため、振動子を2個とした場合について主系が衝撃を受けるときの制振実験とシミュレーションを行った結果、振動子同士の衝突が主系の振動と同期して生じる場合に制振効果が最も大きいこと、このときの振動子の条件として一方の振動子の固有振動数が主系固有振動数より大きくかつ他方は小さく、さらに2つの振動子の固有振動数比が特定の場合に同期した衝突現象が現れることを明らかにした。この結果を元に、主系がx-yの2方向に振動する場合に振動子を2次元的に配置することによって2方向の振動を制振することを試みた。 振動子の2次元的な衝突振動の基本的挙動を調べるため、最も簡単な振動子の2次元配置として、正三角形の頂点に振動子を3個配置した場合を考えた。まず実験により制振効果を確認するため、x-yの2方向に振動する主系上に前述の状態で振動子を設置し、3個の振動子の固有振動数の組合せを変え、かつ主系のx-y面内の振動方向も変えて制振実験を行った。この結果、振動子の特定の組合せのときに制振効果が大きく現れることを得た。つぎにシミュレーションによって制振効果を大きくする振動子の組合せを考えるため、3個の振動子の固有振動数を様々に変えて制振効果を求めてみた。衝突のたびに衝突の法線方向について運動量保存則と反発係数の関係式を使って衝突後の速度を算出し、x方向とy方向の振動子および主系の応答を数値積分によって計算した。その結果、3個の振動子のうち、1個は主系固有振動数より大きく、他の1個は小さく、残りの1個は主系固有振動数付近にしたときに制振効果が最も大きくなることを明らかにし、2次元振動の制振方法に新たな知見を示した。
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