研究概要 |
平成23年度は,振動解析に適した溶接部の有限要素モデルを用いて,有限要素解析で溶接位置がスポット溶接構造物の振動特性に及ぼす影響を詳細に調べた.特に,溶接位置が図面と異なり,ばらつきを有する場合の影響を調べ,設計時の振動特性(所望の振動特性)を実現する上で留意すべき溶接位置など,溶接位置を最適化するための指針を明らかにした.得られた結果は,次のとおりである. 1.振動解析に適した溶接部のモデルとして多点拘束モデルを用いることで,鋼板の要素分割を変更することなく,スポット溶接位置を変化(移動)させることが可能である. 2.溶接位置の変化により,固有振動数が大幅に変化するモードと変化が小さいモードが存在する.変化が大きいモードは,溶接部がはく離するように変形するモードであり,その場合,溶接部のモードひずみエネルギーが大きい. 3.ばらつきの許容範囲の狭い溶接位置があり,特に端部の溶接位置は振動特性に大きな影響を及ぼす. 4.複数の溶接位置がランダムに変化する場合には,個々の溶接位置の変化(ばらつき)が大きくとも,固有振動数の変化が小さい場合がある. 5.溶接位置がばらつくと,ある周波数帯域にモードが密集し重なり合うことで,振動応答が大きくなる場合がある. 6.設計時の振動特性(所望の振動特性)を実現するためには,構造端部などモードひずみエネルギーが大きい溶接位置のばらつきは小さくする必要がある. 溶接位置はスポット溶接構造物の振動特性に大きな影響を及ぼすので,設計時に溶接位置のばらつきに対する周波数応答などの振動特性の変動を評価し,重要な溶接位置を明確化することは重要である.
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