研究課題/領域番号 |
21560242
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
谷口 朋代 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90346370)
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キーワード | 平底円筒貯槽 / 底板浮上り / ロッキング / リング状半解析的要素 / 動液圧 / 有効質量 / 耐震設計 / 剛体-バネ-質点連成系 |
研究概要 |
これまでに研究代表者は、液体の速度ポテンシャルの存在を仮定し、タンク底板を浮き上がらせようとする角加速度(以下、浮上り角速度)に伴って部分的に角折れ状に底板が浮上る剛な矩形タンクに生じる衝撃圧の数学解を導いた。当該数式の厳密性は、円筒座標系で導出した底板の全ての部分が浮上る場合の衝撃圧の数学解の直径部分のそれと一致することで確認した。しかし、底板が部分的に浮上る場合の衝撃圧を、直ちに確認する方法はなかった。 そこで、平底円筒タンク実機の数値解析モデル(直径74m、液深36m)を作成し、陽解法に基づく有限要素法を用いて地震波を入力して時刻歴応答解析を行い、底板浮上り時のタンク直径部に作用する底板の浮上りに伴う衝撃圧を抽出した。その衝撃圧は、時刻歴応答解析で計算されたタンク下端に生じる浮上り角速度とタンク底板の浮上り範囲を前述の衝撃圧の数学解に代入したものと、ほぼ一致することが確認された。これにより、前述の衝撃圧の数学解は、底板の浮上り範囲に関わらず適用できることが確認された。また、研究代表者は、タンク底板が浮上るとベースシェアや転倒モーメントが減少することを、剛体-バネ-質点連成系モデルに対する力学的類推から予測していたが、そのことも定性的に裏付けられた。 一方、ロッキング応答に伴いタンクに生じる応力を求めるためには、タンク底板と基礎との間の接触を考慮し、かつ浮上りによる大変形を考慮しなければならない為、既存の有限要素解析法では適用に限界があることを、これまでに示してきた。そこで、ロッキング応答に伴う応力を精度よく解析するために、リング状の半解析的要素を開発し、静水圧を受ける円板の実験との比較から、タンクのロッキングに伴う応力を精度よく解析できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震時に平底円筒貯槽に生じるロッキング現象は、時間的に連続な系である流体-弾性連成応答(バルジング)と不連続な系であるロッキング応答が連成する現象である。その応答解析に必要な物理量である液体の有効質量を、数学的に扱いが簡単な矩形タンクに生じる動液圧の数学解に基づいて定義し、その量が正しいことを、数値解析などを併用して確認できているから。
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今後の研究の推進方策 |
平底円筒タンクのロッキング-バルジング連成応答を剛体-バネ-質点連成系モデルを用いて解析するためには、底板が三日月状に浮上る場合の円筒タンクの有効質量の定量化が不可欠であるので、数学的に取り扱う方法の開発を進める。また、剛体-バネ-質点連成系モデルに各種の有効質量を適用してロッキングーバルジング連成応答を解析した場合の解析精度について検証する。 一方で、半解析的要素を用いてタンク底板と基礎との間の接触を考慮して、底板浮上り時にタンクに生じる応力を精度よく解析する手法を開発する。また、その場合にタンク底板に生じる応力を、簡易に解析する手法の開発も行う。
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