今年度では、在宅での聴診や訪問診療を可能とする聴診ウェアの試作を行った。本聴診ウェアは長時間計測時にも違和感なく心地よく装着することができるように、通常のアンダウェア(シャツ)を改良し、四箇所に聴診チェストピースを取り付けた。また、専門知識を有しない一般ユーザーにも簡単に良質の心音を採集できるように、大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁の四つの弁の開閉音を顕著に聞こえる箇所にチェストピースがフィットするように工夫をした。複数の被検者に計測した結果、本聴診服を用いることで聴診器操作性ノイズがほとんどなく理想的な心音を採集できたことがわかった。また、ユーザーの体格に合わせて聴診位置を簡単に微調整できる工夫を施された。このように、今年度試作した本聴診ウェアを用いることで、4箇所の心音データを同期で計測できるため、大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁の四つの弁の動作解析が可能となった。 さらに今年度では心音データの解析ならびに弁膜症の自動診断技術に関しても研究開発も鋭意に進めている。特にいくつの典型的な虚血性心疾患の心音がその周波数成分に微妙の変化のあることに着目し、独自に呈示した心音特徴パラメータを抽出し、さらにマルチサポートベクトルマシン学習識別手法を導入して、正常心音と異常心音を大別してから、異常心音として任視された心音データについてサブマルチサポートベクトルマシンを構築し、心房性細動(AF)、僧帽弁狭窄症(MS)、大動脈弁閉鎖不全症(AI)、僧帽弁閉鎖不全(MR)、大動脈弁狭窄症(AS)、分裂心音(SPLIT)の判別を試み、良好な結果が得られた。
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