研究概要 |
接触回転系で発生する多角形化現象は,時間遅れに起因する不安定自例振動であり,線形解析による系の安定判別でも有用な防止対策が可能である.しかし,実際に発生する不安定振動の成長過程や十分成長した後の定常振動の特性を把握することで,その特性に応じた新たな対策が期待でき実用上有用な手段となり得る.そこで,本課題では,系に不可避的に存在する非線形性を考慮した解析手法を開発し,非線形振動特性の解明とそれを利用した防止対策法の確立を目指す.本年度の実施項目は次の通りである. 1. 粘弾性変形に起因する時間遅れ系の基本であるゴムロールの1自由度系を対象に,非線形特性を考慮したシミュレーションを可能とした.その際,自重による初期変形を考慮することで,本来ハードスプリングの特性をもつゴムロールの周波数応答がソフトスプリングの傾向を示す実際の現象との定性的に一致することが確認できた. 2. 非線形振動の代表的な定常周期解の解析手法である調和バランス法を,粘弾性モデルの時間遅れ系に適応し,振動現象の特性を詳細に検討可能な解析ツールを開発した.ただし,定常周期解の安定判別に変分方程式の特性指数を求める方法を採用しているため,解が加算無限個存在する時間遅れ系では高精度な解析を行うには膨大な計算が必要であり,計算効率で実用性があるとは言い難い.この問題点解決のため平成22年度以降も引き続き開発を進める予定である. 3. 既存の実験装置に鉄ロールを1個追加し,遅れ時間がゴムロールの半回転周期である2自由度系に改造した.その結果,2個のモードに応じた多角形化現象が発生し,1自由度系と同様に周波数応答のソフトスプリングの傾向や高調波共振を確認することができた.また,動吸振器を利用した防止対策の妥当性を検討するとともにし,主系のハンマリングのみでは同定不可能なパラメータの同定を,動吸振器を用いて行う可能性を見いだした.
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