研究概要 |
本研究の目的は,環境負荷性能(機械を動かす際のエネルギ消費量)と,機械の動作性能とのバランスをはかりながら,高精度な機械制御を実現する制御系設計法を開発することである.平成23年度は「モデル予測制御に基づく制御系設計手法の開発」と「1軸サーボ系の摩擦補償方法の検討」をおこなった. 1.モデル予測制御に基づく制御系設計手法の開発 本研究ではモデル予測制御の一種であるpredictive functional controkl (PFC)に基づく制御系設計をおこなっている.PFC制御系の出力は,モデル化誤差や外乱が存在すれば設計通りの過渡応答特性が得られない.また,ランプ状やパラボラ状の高次外乱が加われば出力にオフセットが生じ,目標値に一致しない.さらに制御対象が積分要素を含めばステップ状外乱に対してもオフセットが生じるという問題があった.これに対し,PFCに外乱オブザーバを併用すれば,過渡応答特性の劣化を抑え,高次外乱を補償し,積分性制御対象においても目標値に追従させられることを明らかにした.外乱オブザーバ導入による操作エネルギは,実験装置(1軸サーボ系)上ではわずかな増加に抑えられた. 2.1軸サーボ系の摩擦補償方法の検討 1軸サーボ系(テーブル駆動系)に作用する摩擦トルクを,種々の角速度領域において速度制御をおこないながら一定角速度で運転することで,ボールねじ部に発生する非線形摩擦トルクを操作量(電圧)に働く外乱として測定した.得られた摩擦特性を一般動摩擦モデルとして同定した.これにより現在の角速度から摩擦トルクを逐次算出し,操作量電圧に加えることで摩擦補償をおこなう方法を検討した.実機を用いた制御実験をおこない,摩擦の影響を低減化することが確かめられた.また,外乱オブザーバとの比較により,本方法は低速度領域で精密な摩擦トルクの同定が困難で,経時変化の影響を受けやすい問題があることが判明した.
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