研究概要 |
鉄道の施設や車両においては,定期的な検査や現場の巡回,監視などにより,必要な状態が保全され、列車運転の安全性が確保されているが,専用の車両や保守員による計測作業は装置や人件費等の負担が大きい上,計測の頻度には限界がある.営業車両が走行して得られる車両の振動を常時測定,分析できれば,車両やレール状態の常時監視が可能となり,鉄道の安全性向上に大きく寄与する. 本年度は,ターゲットトラッキング等の分野において用いられている適応推定法の一つである多重モデル法を用いて,鉄道車両のサスペンションの状態を,車上で常時監視する方法を開発した.特に,多重モデル法の一つであるInteracting Multiple Model法(IMM法)により,鉄道車両サスペンションの故障を検出する方法を提案し,以下の成果を得た. (1)低次元の推定モデルを用いても良好な推定精度を確保するために,複数の低次推定モデル群から新しい推定モデル群を構成する新しい推定方法(モデル更新型IMM法)を提案した. (2)モデル更新型IMM法を用いて,鉄道車両サスペンションの故障を推定するアルゴリズムを開発した. (3)開発した推定アルゴリズムの有効性を確認するために,マルチボディダイナミクスソフトSIMPACKを用いて,車体台車間左右動ダンパの故障検出シミュレーションを行った.故障検出シミュレーションの結果,提案の方法により,検出精度が大幅に向上する事が明らかになった.
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