研究概要 |
非線形制御系にも適用可能な実用的かつ信頼性のある机上検証手法を開発し,車両運動制御系への応用例からその有効性を示すことである.制御系の机上検証問題は,実システムの運用に際しては制御系設計問題と同等,あるいは設計問題以上に重要であるにも関わらず,十分な研究がなされておらず,現場的な経験とシミュレーションに頼っているのが現状である.本研究のねらいはこの問題に対し有効な解析的手法を提供することである. 本研究は最適制御理論に基づいて可制御領域を数値的に求めることが一つのポイントであるため,確実に最適制御入力を求める最適化手法が重要となる.そこでマルコフ連鎖モンテカルロ法を応用した新たな最適化手法について検討を行った.この方法は最適化すべき評価関数をボルツマン分布をもつ確率密度関数に変換し,この確率密度関数の期待値を求めることによって最適解の近似値とするものである.典型的なテスト関数であるRosenbrock関数,Rastrigin関数,Ridge関数に開発した最適化手法を適用した結果,本手法が実際的な問題にも適用可能であるとの結論を得た. 制御系の検証手法に関しては従来から研究してきた分岐解析を最悪入力評価と組み合わせた方法を開発し,その成果を2009年8月にスウェーデンで開催されたThe 21st International Symposium on Dynamics of Vehicles on Roads and Tracksで発表した.また,新たな制御系の設計手法として品質工学に基づく非線形制御系の設計手法を開発しているが,本年度はこれをさらに改善して制御系と構造系の同時設計への適用を試みた.その結果は2009年12月にニュージーランドで開催されたThe 7th IEEE International Conference on Control & Automationで発表した. 以上の結果から,2009年度の目標は達成されたものと考えられる.
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