研究概要 |
分布定数系はり自由端境界での曲げモーメント制御の低周波域波動制御性劣化の原因を探索した.計算アルゴリズムを改修して高精度な50次固有モード展開解で応答を表現したが制御応答の改善が見られず理論的な周波数応答を検証できなかったため,原因を別の観点から調査した.分布定数系片持ちはり自由境界でせん断力制御では全周波数域で完全な制御性が確認できた.境界条件の違いを検証すると,単純支持境界では安定な制御応答が求め易いが自由境界では演算時間幅や僅かな演算の誤差の影響が強くあり,自由境界の差分近似制御則が制御誤差を誘発しやすい系であることが分かった.モーメント制御は差分表現をさらに近似しているため低周波域でのモーメント制御は実用的でないことが分かった.そこで,本手法の適用対象拡大のため,せん断力制御による矩形板の振動制御と損傷検出の可能性を調べた.矩形板制御ではx,y方向の変数分離が可能な単純支持・単純支持,単純支持・固定境界に対して制御性を調べ,はりと同様の差分制御則による制御性を確認した.損傷検出に関しては,波動制御された系が振動モードが消失して系全体が一様な振幅となることを利用するもので,はりの極めて微小な部材の剛性の低下でも損傷箇所を検出できることが分かった.任意の境界条件で加振点と波動制御点の間の部材の損傷個所で振幅が変化し,加振周波数が高いほど損傷個所が明瞭に浮き上がることが分かった.固有振動情報からは損傷同定できない場合にも有効で,固有振動数0.1%程度の低下であっても十分検出でき,計測振動値に空間フィルタ処理を行うとより明瞭に損傷個所を検出できる.複数個所の損傷個所も同定できるため,表面検査では確認できない内部の僅かな損傷にも有効であると考えられる.
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