研究概要 |
ばねと摩擦ダンパで構成された振動絶縁装置は単純な機構で大きな減衰力が得られ保守管理が容易であるが,摩擦力一定のダンパでは残留変位や共振ピークを抑制できないなどの問題ある.一方,摩擦力が相対変位に比例して変化する場合には粘性減衰と似た特性を得られることが期待される.そこで,本研究では円柱ブロックと傾斜レバーを組み合わせて,相対変位に比例して摩擦力を変化させることのできる新たな機構の比例摩擦ダンパを提案した. この機構では,円柱ブロックに回転軸で回転可能な傾斜レバーが接触しており,回転ばねにより回転軸回りのモーメントが作用する場合に,円柱ブロックが移動してレバーが押し広げられると,垂直力が増加するため,摩擦力も増加する.なお,摩擦力の作用線とレバーの回転軸間にはオフセットがあるため,自動車のドラムブレーキのセルフサーボ(自己倍力)作用と同じ特性により,摩擦力変化を大きくできる特徴がある. 数値シミュレーションおよび実験を行った結果,基本的には期待された特性の摩擦ダンパを実現できることが確認されたが,実験装置の設定によってはスプラグ・スリップと思われる振動が発生した.この主な要因は,レバーのたわみ変形と慣性モーメントによることが分かった. 今後は,これらの不具合を考慮して更なる改良を行ってから,振動絶縁装置に組み込み,実用化に向けた研究を進める計画である.
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