研究概要 |
昨年度の研究では,円柱ブロックと回転軸で支持された傾斜レバーを組み合わせて,相対変位に比例して摩擦力を変化させることのできる新たな機構の比例摩擦ダンパを提案し,期待された特性の得られることが確認された.しかしながら,実験装置の設定によってはスプラグ・スリップと思われる振動が発生し,十分な性能を発揮できない虞もあることがわかった. そこで,本年度は振動の発生要因について調べるとともに,この抑制策について検討した.この結果,振動発生要因はレバーなどの柔軟性によるスプラグ・スリップと考えられた.また,垂直力や摩擦力を測定するため,多数の力センサ,リニアガイドおよびこれらの取付具を取り付けてあるが,これらが振動発生の要因にもなっていると推定された.そこで,これらの要因を考慮した解析モデルを作成して数値シミュレーションにより振動の発生を再現して実験結果を確認するとともに,レバーの剛性を大きくし慣性モーメントを小さくする等の構造変更を行って,実験装置を改造した.この結果,振動発生を極力抑制することができ,対応策が有効であることが確認された. さらに,傾斜レバーを板ばねで支持することにより,より簡便でコンパクトな構造の摩擦ダンパで同等以上の性能を発揮できることが期待される.実験装置を作製し実験を行ったところ,基本的には目的とする特性が得られることが確認できたが,板ばね支持方式では,板ばねの横たわみのために,回転軸で支持する構造より振動が発生し易いことも分かった.今後,新たな振動発生の解明と対策を検討する予定である.
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