研究概要 |
これまでの予備研究において,衝突時の撃力モデル,機構及び環境側への撃力の伝播モデルに従い,ロボットの機構の破壊を防ぐための,リンク・軸の設計,クラッチの導入による駆動系への撃力伝播回避手法の検討を行ってきた. 平成21年度は,機構の撃力伝播および衝突による手先速度変化のモデルの見直しを行い,これまで単一の剛体とみなしてきたマニピュレータを多リンク構造として解析を行った.これにより,マニピュレータの姿勢による見かけの慣性の変化を解析に組み込むことが可能となり,衝突後のマニピュレータの挙動をより正確にモデル化できるようになった.このモデルに基づく解析を行うことにより,これまでは衝突面に垂直方向の速度を持つ衝突しか扱えなかったものが,任意の速度を持つ衝突を行うことが可能となった.この解析を行ったところ,衝突面接線方向に対して,衝突前よりも衝突後のほうが速度が上がる場合があることが判明した.これは見かけの慣性に法線方向成分と接線方向成分の干渉項が存在し,法線方向の衝突の影響が接線方向に及ぶことがあるためである,これを利用することにより,衝突を利用することで,マニピュレータの手先速度をモータで出すことができる最高速度よりも大きな速度を出すことができることが明らかとなった.平成22年度以降はこの性質をより詳しく調査し,もともとは出せない高速な手先速度を出すことが可能な跳ね返り動作としてのインパクト・マニピュレーションの性質を明らかにしていく予定である.
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