研究概要 |
人間は金槌で釘を打つ,バットでボールを打つという様に衝突現象を利用した作業を行なっている.マニピュレータもこの衝突現象を利用することでより幅広い作業が可能となると考えられ,これまでに衝突を伴うマニピュレーション(インパクト・マニピュレーション等)の研究が行われてきた.また多リンク機構マニピュレータの衝突を考える上で,手先の見かけの慣性は重要な要素である.衝突時のマニピュレータの姿勢によって見かけの慣性は変化し,衝突後の発生撃力や手先速度に影響を与える. 平成22年度は,見かけの慣性により変化する,衝突時に生じるマニピュレータ手先の速度変化に着目し,これを利用した手先運動の高速化手法を構築した.提案手法ではマニピュレータ手先を壁面に衝突させ,反発により衝突面接線方向に衝突前よりも大きな速度を発生させる. また提案手法の応用例として,高速な手先速度を活かしたリリース型マニピュレーションの様な質量の小さい対象物を弾く操りを提案した.対象物の質量が小さい場合,対象物の運動は手先が対象物に与える初速度に大きく依存するため,高速化手法を用いることでより広範囲へ対象物を移動させることができると考えられる. 22年度はマニピュレータの動力学を考慮した衝突モデルを構築,解析することにより,見かけの慣性により衝突後大きな手先速度が得られることを示した.そして実機による衝突実験によりシミュレーションとの比較を行い,提案手法が正しいことを示した.同様に実機による弾き操作実験を行い,提案手法を用いた作業の実証実験を行なった.
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