車体と車輪をつなぐ唯一の軸を通して車輪自体の回転のみならず、爪の出し入れ制御用駆動力も伝達して車輪外周の必要な方向にのみ複数の短い爪を出し、車輪を段差や階段の上下に昇降させ、あるいは、路面方向に爪を出して車輪のグリップ力を高めて滑りを防止し、さらには、上方に待避させて通常の高速走行を可能にする車輪構造と爪の運動機構を考察した。また、複数爪の連動に必要な動力の高効率伝達法を明らかにし、車輪外径に依存する爪の適正数とリムへの軸支構造設計を最適化し、1車輪に6個の足を出入りさせる車いすの基本部を外注して製作した。 後半では、車いす本体側の電動モータと車輪内部に配置したチェインによって軸支される複数の爪を指定する向きに出し、反対側で隠す動力伝達機構を完成させた。実際に、爪の回転軸に固定するスプロケットに半周以上噛みあわせて歯飛びを無くすチェイン経路を定め、かつ、その張力をアイドラーで調節し、複数爪が顔を出す方向を装置本体側の駆動力で制御可能なようにしか。車輪回転力を二重軸の内軸と外軸のいずれで駆動するかについては、爪に比べて車輪の駆動トルクが大であることから構造に応分の強度をもたせ、内軸を車輪用、外軸を爪用とし、中央軸上に重なる複数の円筒にラジアルベアリングとスラストベアリングを配置し、遊びのない運動になることを手動制御により確認した。さらに、前後車輪の全ての爪を連動させる実験を行い、干渉系にある車輪と足の全てがセレーション加工によって動力を効率よく伝え、回転角制御精度を向上できることを確認した。
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