外側に突き出す爪を車輪の滑り防止用に使う場合、路面の傾斜角の変化によって爪は重力方向から外れる傾向を示し、爪の効果を期待できなくなる。そこで、路面斜角と車体の進行方向角をパラメータとして車体に対する爪の適正方向角の算出式を導出した。具体的に、電導液の抵抗変化を検出原理とする2軸傾斜角センサを車体に装着し、これにより車体のピッチ角とロール角を実時間で入力し、これら2つのセンサ情報から路面斜角と進行方向角を推定し、爪を指定する向きに補正するサーボ制御回路を組み、搭乗者の操縦面の負担軽減を可能にした。 段差昇降に爪を水平にする場合と垂直にする場合の2通りあり、前者は、爪の回転トルクを大にする難点をもつが昇降時の着地面積を大にして昇降を確実にする利点をもつ。一方、後者は、着地面積を小にして動作を不安定にするが、椅子の足の様な支持姿勢をとるため回転トルクを小さくする。これらの長所短所を定量的に評価するため、PCカードからセンサ情報を直接読み込むインターフェースを組み込み、角度に関するソフトウェアサーボ回路を設計した。また、チェーンを使い1車輪につける六つの爪の奇数番組と偶数番組を独立させて回転させる機構を製作し、車輪回転にも干渉されない爪方向角の制御を実現した。さらに、これらの運動を屋外の実験で確認し、四輪車でも斜面や階段の昇降に有効なことを実証した。
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