足つき四輪車の不整地移動を実現するため、車輪と足の同期制御プログラムを開発した。実際に、1)着地グリップ力を変える足の制御、2)車体の上下動を解消する足と車輪の協調制御、3)歩幅を制御する足と車輪の協調制御、4)段差乗り上げに有効な足の協調制御、5)路上に散在する瓦礫等を突き押し排除する機能を足にもたせる制御について考察し、それぞれの制御プログラムを開発した。また、実験によりいずれも有効に作用することを確認し、実用化の見通しを得た。 1)では雪道、砂道、農道等で足を真下に向けて滑り易い路上や軟弱な路上での転倒防止を、2)では歩行中の車高を指定した値に保持し、かつ、上下の揺動を無くして搭乗者に与える不快感の低減を、3)では操舵歩行時の操縦性を向上させる歩幅制御を、4)では足の乗り上げ高さと跨ぎ越え長さの積として段差領域を定義し、降下時の足によって段差を押し動かす領域に大小があり、これと移動に必要な関節トルク和を総合した足制御の良否判別を、5)では足を手として使用することの重要性を、明らかにした。とくに、2)では左右の高さを違える歩行により車いすのローリングを抑制し、3)と4)では各車輪に付けた6足を奇数と偶数の二組に分けて制御し移動のパフォーマンスを向上できることを見出した。階段上昇時に足先着地点をつなぐ四辺形の水平面への投影面積は減少し、車いすの着地状態は不安定になる。また、大きな駆動力が車輪に必要になる。しかし、足の向きを奇数組と偶数組で逆向きにすることで、前後車輪を駆動するモータに必要なトルクは相殺される効果が大なことを確認した。このことは、奇数組と偶数組で向きを逆にする足制御が階段昇降に有効なことを意味し、実験を通して得られた重要な成果の一つである。この他、フィールドで多くの走行実験を行い、車輪につける足方向を変えることが車いすの移動性能向上に如何に重要であるかを実証した。
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