垂直方向に変形する非線形バネの製作プロセスを考慮して、基本的な動作を評価するための垂直方向に駆動するアクチュエータ構造を設計した。これに合わせて、摩擦などの実際に生じる現象を考慮に入れた有限要素法解析による非線形バネの詳細設計を行い、アクチュエータの性能予測を行った。また、これにより非線形バネの動作形態と形状も変更になったため、非線形バネの製作も含めたアクチュエータ全体の製作プロセスの設計も行った。 昨年度に試作した簡便な構造を持った垂直方向に駆動するブリッジ型アクチュエータの動作については、有限要素法を用いた静電場-構造連成解析により詳細な動作解析を行った。その結果、シミュレーション結果と駆動実験結果がほぼ一致することが確認され、静電場-構造連成解析により妥当性のある設計が可能であることが確認できた。 製作においては、引き続きグレイトーンリソグラフィ法を用いた垂直方向に変形する非線形バネの製作プロセスの開発を行った。詳細なプロセス条件の検討により、昨年度までの問題を解決して非線形バネの自立構造を製作することが出来た。しかし、土台からの剥離後に残留応力の影響と思われる変形が非線形バネに発生し、設計通りの形状を得ることは出来なかった。原因を特定すべく検討を進めているが、本研究期間内では明らかにすることが出来なかった。 これらと平行して、垂直方向に変形する非線形バネおよび垂直方向に駆動するアクチュエータの力学特性を評価するための評価装置を自作した。 一方、酸素RIEを用いて水平方向に駆動するアクチュエータの試作を行った。ほぼ設計通りの可動なアクチュエータ構造体を試作できた。しかし、製作工程において配線の剥離が発生したため、完成には至らなかった。配線方法、プロセスの再検討を行っているが、本研究期間内には解決できなかった。 以上のように、設計とシミュレーションによりアクチュエータの有用性、高出力化を確認できていることに加え、製作プロセスについても80%近くは確立できているが、製作工程で様々な問題が発生したため、計画通りにアクチュエータを完成させて駆動と特性評価を行うことは出来なかった。
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