研究概要 |
狭い場所で自由に移動できる全方向移動装置は、走行安定性が不十分である点と高コストである点から、現在のところ実用に十分堪える製品はまだ開発されていない。しかし、大変有望な技術である。そこで,申請者は従来の全方向移動装置の長所を継承し、欠点を克服する新技術を研究中である。本研究では、この新しい全方向移動装置の性能をより向上させ、応用への発展を目指す。具体的には電動車椅子の開発を行う。将来、高齢化や福祉の高度化等から、電動車椅子の実社会への貢献が、現在よりもさらに大きくなると予想される。また、ロボカップで厳しい条件での実証実験を行い、そこで得られたノウハウを電動車椅子開発にフィードバックする。本研究で得られる技術は、近い将来、電動車椅子だけでなく、工場内搬送台車、案内ロボット、清掃ロボット、家庭用ロボットなど、極めて広い応用が期待される。平成23年度は、人間が搭乗可能な大きさの全方向移動装置を新たに試作した。申請者が在する北九州学研都市はロボット特区に指定されているので学研都市内の舗装路や歩道等の屋外での走行実験が可能である。そこで、耐久性、耐候性、安定性、安全性などを実使用条件のもとで確認するため、試作した人間が搭乗可能な試作機を用いて北九州学研都市での屋外走行実験を行った。学研都市内での実証実験では、直進性や安定性、エレベータの段差の乗り越え、歩道と車道の間の段差の乗り越え、障害者用スロープの登坂、濡れた路面での走行、石畳での走行、芝生での走行、砂地での走行、狭路での扱いやすさ、などの性能を昨年度に引き続き詳しく調査した。ここで生じた新たな問題点を改善した。例えば、駆動ローラの耐久性が乏しい点が明らかになったが、材質を変更し、問題点を解消した。今後、本研究を継続し、全方向移動装置のさらなる改良に取り組む予定である。これらの成果は学会発表と論文投稿を行った。また、イノベーションジャパン、新技術説明会に出展し、積極的にホームページ等で公開した。
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