研究概要 |
人間の皮膚は,触覚や温感,痛覚などの感覚のために様々な検出器が組み込まれており,接触状態において人間と環境の重要なインターフェスとなっている。そのような感覚の中で,痛みは安全性の確保のための重要な感覚である。人間は痛みを感じ,学習する機能を有していることから怪我や事故から身を守る行動ができると考えられている。このような主観的な痛みをロボットに理解させる試みは,痛み感覚を用いた行動規範の学習など高度な自律ロボットの構築において有効であると考える。多くの痛みの種類があるが,痛み信号を利用した安全システムの設計にあたり,ロボットとの干渉で発生する機械刺激は最も代表的な痛みである。 そこで,痛みモデルを利用した積層構造のセンサーユニットを試作した。このユニットは緩やかな圧による一次痛だけでなく,衝撃力によって発生するズキズキとした二次痛まで模擬できる。ヒトの皮膚を硬さの異なるシリコン樹脂の積層体で模擬し,積層界面に集中するひずみをPVDFフィルムで検出した。次に,複数のセンサを利用して,痛みの特性や伝達処理特性を模擬したアレイ型の痛みセンサ処理システムを構築した。開発した痛みセンサを用いて操作者へ痛みをフィードバックする方法として,振動刺激を利用した振動フィードバック実験を行った。最後に,痛みフィードバック系のスキームを電動車椅子に利用し,痛みの振動フィードバックのスキームの応用可能性を検証した。
|