研究概要 |
本年度は,(1)人の手指関節運動の制御スキルの解析,(2)高速な剛性可変機構の試作と評価を行った.(1)については,物体投げ上げ時の手首と指関節の連携運動について解析を行った.その結果,両関節とも背屈運動から動作を開始し,その後屈曲運動へ移行し投げ上げを完了することが確認された.これは関節駆動筋の弾性要素としての特性を巧みに利用したスキル動作である.また,指関節の運動では屈曲運動中に筋の拮抗活動を生成し,運動の停滞と剛性を一時的に高める点が存在することが確認された.これは,運動の停滞により,手先に載っている物体の離脱を促すとともに,拮抗活動解消後にさらなる指先の高速化を可能とし,物体を高くはじき上げる目的を持った動作であると考えられる.このように,短時間の動作であるが,関節剛性の制御と力の干渉を巧みに利用したスキル動作であり,ロボットのスキル動作の手本となる知見が得られた. 一方,(2)の高速関節剛性可変機構の試作では,リンク部を弾性体で支持する機構を採用した.これは弾性体での支持力を調節することでリンクの外力に対する変位特性を制御する方式のものであり,これを搭載したロボットハンドを製作した.基本性能を評価した結果,負荷トルクにリンク先端の変位量で評価した剛性は15Nm/m~55Nm/mの範囲で変化が得られた.また,最低剛性から最高剛性への調節に要する時間はおよそ1sであることが確認できた.この調節時間に関しては従来の機械式剛性調節に対しては十分高速であるが,さらなる高速化が必要と考えられる.
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